2025/04/01 23:31



僕は、広島県福山市という所で産まれ育った。福山市は広島県の最東部に位置し、備後地域にある市だ。広島市に次ぐ人口で、中国地方で二番目の中核市に指定されている。確かに、街には沢山の施設があり、生活していくには充分だ。

両親と兄弟の4人家族で、コンプレックスはあるが、五体満足で産んでもらえた。家庭は裕福といえないが、貧困でもない。毎日、ご飯も食べさせてもらえて、お風呂にも入れた。学校にも通わせてもらえ、習い事だってさせてもらえた。愛を受けて育った。友達も恋人もいた。充分な程贅沢に生きる事ができた。僕の地元。


そんな地元で服屋を営んでいる。名前は、CARRY GO BRING COME(キャリ  ゴ ブリン コム)。ジャマイカのスラングでゴシップや噂話といった意味がある。特に深い意味はないが、広島県の福山市をカリブ海に浮かぶ小さな島国のジャマイカにみたて、街や人々の噂になればいいなと思い名前をつけた。オープンから一年半年が過ぎようとしているが、果たして噂になっているだろうか。そして、服を通して皆さんを幸せにできているだろうか。そんな事を想いながら、一つの区切りを迎える。


皆さんにとっての地元はどういう存在だろう。

ファッションに取り憑かれてしまった僕にとって、すごく窮屈で退屈な場所だった。刺激を常に求める僕にとっては、安心感なんてものは必要なかった。刺激がなく、興奮しない場所なんて最悪だった。嫌で仕方なかった。だからまた、地元を離れる。


なんてことない、いつもの事。


おばあちゃんが、末期の癌を患い、入院していた時、僕はあまりお見舞いに行かなかった。事実を認めず、現実から目を背けたかった。おばあちゃんのことが大好きだったから。そうすれば、少し楽に感じることができた。


なんてことない、いつもの事。


ただ、地元を離れるだけ。離れてもお店の痕跡は残る。嫌いだったはずの地元で、大好きな服を通して、大好きな人たちと出会ってしまったから、また目を背ける。

余談だが、お店を引き継いでくれる友人は、地元にずっといるし、地元が好きだ。僕より適任だと思う。


イントロはかけたから、自由に歌って、踊ってくれれば嬉しい。願わくば、地元を離れる僕の耳に、その歌が聞こえるように。


僕は地元が嫌いだ。


「いっていることは うそでも うそをつく きもちは ほんとうなんだ」

「うそでしかいえない ほんとのことが ある」

-【うそ】詩 谷川俊太郎


今日はエイプリルフール。始まりと終わりの歌。


Mozzie